トンボ





トンボが飛んでいる。




最近は、すっかり見なくなった。


子供の頃はいっぱいいたのに。


子供の頃はどこでもいたのに。




目の前のトンボは、子供の頃に見たヤツより随分ちいさい。


昔と今じゃ、環境が変わったからかも知れない。


それとも僕がおおきくなったからかな?




トンボはちいさくても、ちゃんと飛んでいる。


翅を休める事なく。


高いところを飛んだり、低いところを飛んだりしている。




あの頃は上手く捕まえる事が出来なかった。


逃げられたり、見失ったりした。




上手に捕まえた人に憧れたっけ。


皆で、おおきなトンボを見た事を話したりしたっけ。




これから先、トンボを見る機会は一体どれだけあるだろう?


どんどん数が減って、種類も減って。


今じゃお目にかかる事さえ難しい。




僕は、トンボを捕まえたいと思った。


子供の頃、捕まえる事が出来なかったから。


もうトンボを見れる機会があるか分からないから。




子供の頃、あんなにいたトンボが、


今じゃお目にかかる事さえ難しいんだ。


僕の見つけたトンボはちいさいけれど、


捕まえて皆に見せてやりたいんだ。




その時には、まだトンボは飛んでるよって言ってやるんだ。




僕が見つけた、ちいさいトンボ。


お願いだから逃げるなよ。




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