中川商店の女





中川商店で働いてる女はかわいい。

中川商店は生活雑貨から何に使うのかよく分からない物まで売ってる店なんだけど、とにかくそこで働いている女はかわいい。

レジ打ちの女と陳列をしている女がいるんだけど、レジ打ちの女より陳列をしている女の方がかわいい。

とにかくかわいい。



僕はそこでいつも130円のパンと100円のパックコーヒーを買って帰る。

レジを打ってもらってる時は、たいがい陳列棚の方を見ている。

しかし、陳列をしている女は僕の事を気にもせず陳列を続ける。

そして、「ありがとうございましたー。」という声を背に年代物の引き戸を引いて店を出る。

また、声もかわいい



もう1年くらい行き続けてるけど、まだ「ティッシュペーパーってどこに置いてます?」以外は喋った事がない。

その時は「こちらです。」としか言ってもらえなかった。

名札を見たら『中川』と書いてあった。

下の名前は多分かわいい。




娘さんなのか?

僕と陳列をしている女が結婚したら中川商店を継ぐ事になるのかも。

と、ありもしない事を考えながら買ってきたパンを食べる。

そんな事を半年近く続けてる。

多分これからも続く。



ある日、中川商店に行ったら陳列をしている女はいなかった。

何時もいる日に来たのになぁ。

そう思いながら130円のパンと100円のパックコーヒーをレジに持って行った。

そして何時もの様にレジを打ってもらってる最中に陳列棚の方を見た。

レジ打ちの女に気にしてる事を悟られない様に、買い忘れた物はないかなーって素振りで見た。

レジ打ちの女は何時もの様にレジを打って、何時もの様に「ありがとうございましたー。」と言った。

何となく後ろ髪ひかれる気持ちで店を出た。



それからずっと中川商店には行ったが陳列をしている女はいなかった。

その間、130円のパンと100円のパックコーヒーはずっと買っている。

陳列をしている女が復帰した時は少し豪勢に買ってみようと思ってみたりもした。



何か「中川さん、無事出産したんですって。」とか言ってた日があった。

「けど、相手の人結婚する気ないんでしょ?大変じゃない?」とかも言ってた気がした。

「遊び人だから〜。」とか言ってたけど最期まで聞かずに店を出た。





その次の日も中川商店に行った。

レジ打ちの女もかわいいから。




ホームページにもどる