糞姫





僕はもてない。いや、もてないと云うかもてる努力をしてないのかも知れぬ。

ただ、ひたすらに飯を喰らい、糞を垂れ流すだけの毎日である。



蝉が鳴き、寝汗が酷くて寝覚めたこの日もただ、ひたすらに飯を喰らい、糞を垂れ流すだけの一日になるはずだった。

タオルケットがべちゃべちゃだった。去年の夏もこんな目覚めだったかと思いながらタオルケットを洗濯機に入れる。

尻を掻きながら洗濯機のスイッチを入れ、昨日の夜スーパーで買った安売り(80円)のパンを3個喰らい早速糞をした。




何時もの様に糞をひり出すと、ぽちゃんと云う音と共に甲高い声がした。

はてと思い尻を少し浮かした状態で、便所の扉を開け玄関を見たが気配は無い。

ふと便器を見てみると若い女の形をした糞がある。

若い女の形をした糞がこちらを見ている。

洗濯機が洗濯から濯ぎに変わっていた。





僕は糞を『糞姫』と名付けた。




糞姫は何もしない。ただ、ひたすらに飯を喰らい、糞みたいな物を垂れ流すだけの毎日である。

また糞姫は臭かった。何故僕はもっと野菜を喰らわなかったのだろうと後悔した。

しかし、笑うと可愛いのだ。僕は其れだけの為に糞姫を置く事にした。



糞姫は何もしない。ただ、ひたすらに飯を喰らうだけだったので、すぐに大きくなり服が必要になった。

女物の服を買いに行くのは恥かしかったが、糞姫は裸だし、なにより糞なので家の外に出せぬと思い、僕が買いに行くことにした。

駅前のデパートに行き婦人服売り場を見て回ったが、糞姫が似合いそうな物や、それよりも僕が良いと思うのは見つけらず、結局店員が勧める服を買った。

僕が着ている物の4倍の値段がした。



糞姫は何もしない。と云うか何もさせなかった。

炊事は衛生的に良くないと思い絶対やらせなかったし、また家事をさせてもいたるところに糞が付き、結局は僕が拭くことになるので二度手間だった。

僕にとってそれは耐えがたかったが、笑うと可愛いので置いた。



一度、糞姫と夜の児童公園に行った。

ブランコに乗り、滑り台で滑り、シーソーをした。

糞姫は良く笑った。

それは、公園の端の方を歩いていた猫にも優越感を感じられる事だった。





夕立が降った夜があった。

その夜、僕と糞姫は結ばれた。

お互い初体験だった。

近親相姦の様な気がして、何故か恐ろしかった。

そして深い口付けをした後、僕らは寝た。





朝、糞姫はカラカラに乾いていた。

笑うと顔にヒビが入った。

僕は糞姫を便所に流して、昨日の夜スーパーで買った安売り(80円)のパンを3個喰らった。

少し苦かったが全部喰った。




また、ただ、ひたすらに飯を喰らい、糞を垂れ流すだけの毎日が始まる。

僕はまた糞をする為に便所に向かった。




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